Film Critic

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僕はテレビは好きでも嫌いでもない。格好をつけて、テレビはいかんという人がよくいるけど、それはテレビを批判的にみる能力のない人に違いない。それはともかく、子供の頃から僕はどちらかというと活字が好物で、新聞、雑誌、本を読むことに時間を費やしていた。テレビ番組で特別に印象に残っているものは、いずれもニュース番組か深夜番組の類で、それすらも細部までは記憶にない。でも、ひとつだけ、僕の人生を大きく左右したテレビ番組がある。それは、淀川長治が司会をしていた、『日曜洋画劇場』のことで、僕はこの番組を毎週楽しみにしていた。番組、いや、淀川長治の映画に対するスタンスは、どんな駄作映画でも、映画である以上、鑑賞の仕方、映画を観る角度によっては楽しめる、という非常に知的なものであった。だから、クリント・イーストウッド主演の『ガントレット』とか、チャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』とか、マイケル・ホイ主演の『ミスター BOO! / アヒルの警備保障』とか、どんなくだらない映画でも、僕は好きになった。今でも、僕は映画は大体なんでも好きで、映画を観るのは娯楽というよりは強迫観念に近いとよく言われる。だから、映画だけでなく、視点を変えることによって、人生をも楽しませてくれた淀川長治には、感謝の気持ちしかない。

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