Four Fried Chickens and a Coke

ジョン・ランディス監督の『ブルース・ブラザーズ』という傑作映画があって、僕はこの際立つエンターテイメント作品を四国の小豆島でアメリカ人である父と旅行中に観た。主演はジョン・ベルーシとダン・アクロイド。他にもジェームズ・ブラウンやアレサ・フランクリン、そしてキャリー・フィッシャーも出演していて、映画好きはもちろんのこと、音楽ファンにもこたえられない内容となっている。当時の僕は小学生か中学生で、僕はこの映画を史上最高傑作の名画だと思い感動した。さて、字幕はというと、全く記憶にない。当時はあまり意識していなかったのだろう。小豆島から僕が住んでいた広島市へ戻って数年後、某テレビ局でこの映画の日本語吹替版が放送された。当時の僕は、この吹き替え版を素晴らしい出来だと感激した記憶がある。本編は音楽バカとも言える二人のハチャメチャな主人公が繰り広げるワイルドなロードムービーで、その中で兄のジェイクが映画の舞台であるシカゴ市内のソールフード・レストランでアレサ・フランクリン演じる店主にフライドチキンとコカ・コーラを頼むシーンがある。英語のセリフは確か”Four fried chickens and a coke”で、日本語吹替版ではそれを「チキンの丸揚げ四個とコーク」と訳していて、僕はこれは見事な訳だと子供ながらに思った。なぜなら「丸揚げ」という表現がいかにもそれ風で、アメリカの都会のソウルフード・レストランのバカでかいカラッと揚がったおいしいチキンをその言葉がうまく表していたばかりでなく、あまりに日本的な中華風家庭料理を思わせる、ある意味日常的な風景を引きずる「唐揚げ」やカーネル・サンダースを思い起こさせる「フライドチキン」という表現を避けた所が僕は訳者が優秀だと思い感激した理由である。そして、チキンを「四つ」ではなく「四個」とした所も、いかにもクールだけど無教養層のアホっぽいアメリカ人をうまく捉えていると当時の僕は思った。

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